相続の始まる原因および時期(民法882条)

相続は、人の死亡によって始まります。旧法の家督相続では、戸主が生存中に子どもに相続させて自分は隠居するというような制度がありましたが、今の民法では、相続が始まる原因は人の死亡だけです。なお、生死不明者に対して失踪宣告があると、その人は死亡したものとして扱われるので、やはり相続が始まります。

相続が始まる時期は、人が死亡した瞬間で、普通の死亡の場合は、死亡届につけられる医師の死亡診断書などで決まります。

死亡の時期が相続関係に大きな影響を及ぼす場合があります。例えば、婚姻の届出が済んだばかりの夫婦が新婚旅行中の飛行機事故で死亡したとすると、その夫婦には子どもはいないと思われるので、親が相続人になります。ところが夫が妻よりも1秒でも早く死亡したとすれば、夫の財産の半分を妻が相続し、それを妻の親が相続することになり、逆に妻が夫よりも早く死亡したとすれば、夫が妻の財産の半分を相続し、それを夫の親が相続することになります。

このような場合、実際にどちらが先に死亡したかを証明することはほとんど不可能ですから、同時に死亡したものと推定されます。同時に死亡した者の間では相続は発生しないので、この例では、夫の財産はすべて夫の親へ、妻の財産はすべて妻の親へ行くことになります。

相続人としての権利や義務は、相続が始まってから発生するものですので、ある人が死亡すれば相続人にとなる人もその人が死亡しない限り、その人の財産に対して何の権利も持たないことになります。

例えば、親が所有する不動産の所有権を他人に移転登記しても、子どもは単に将来親が死亡すれば相続できるという期待権を持つだけで、今はまだ、親の財産に対して権利を持つものではないから、親のした仮装売買の無効確認や所有権移転登記の抹消を請求することはできません。

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